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Archive for 2010年7月

プア・アーリー

手のひらにぽんとはたけば紙ふうせん春光のなか便りは届く
そよ風にのせてきたのか細き字はみどり濃くなる欅のしたへ
かにかくに巡る思いの樹の陰を巨きトカゲはひたとあるけり
すそ野からはなたれてゆく山焼きを思へばめぐる風のただ中
ヘアピンをくはへしきみの背景の石の舞台にあはきはなびら
七分咲くソメイヨシノの花陰に髪をたばねしきみは踊り子
乳房を包むかたちの指そろふ乙女の踊るプア・アーリーの詩
黒髪にゆれる白百合歓楽の宴のひとらのまなざしあつく
恋もせよ歌もうたへよ三千の桜はなびらふるはすやうな
そしてまた夢のつづきを届けよとポストの中に降らす花びら
ナイル7月号
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十五年

明け方の体育館にはともしびがあまたゆれをり尋ねたづぬる
田舎にて荼毘にふします貼り紙は懐中電灯のあかりの中に
指の爪はがれた人が歩みきてなみだ拭ひぬわれの泪を
いま沈みあす昇りくる太陽にかはりなけれど 人は還らず
すみれ咲き遥かなる風ふきくれば君の声する お元気ですか
今もなほエースナンバー風に揺れベンチの中に語りつがるる
一目あふことの叶はず時は過ぎありし日の笑み抱へたままぞ
蒼穹をいまし架けゆく虹のごとセロの調べに風となりたり
十五年ほほゑむきみの翳深しあの日のままの若さのなかに
問ふてみたし何を基準になされしかひろがる海に光りさす時
ナイル6月号

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花の名を教へし頃の口振りで妻は言ひをり「モクレンの花」
みずいろの空を仰ぎて電話をす娘の恋のハリケーン模様
悲しみを捨て難いのならあのバスへ81系統海沿いをゆく
熱き湯をのの字のの字に注ぎこむ成人の日の娘のために
冬の日の光りのやさし坂道を晴れ着のきみは振り向きもせず
守りたきものがあります少年の見上げる果てのポプラの一樹
遠き日に人を裏切ることのあり黄のカナリア飼つていた頃
少年のわれの愛したカナリアは痛みを告げず森へといつた
さあどうぞ二人わけあふ空間にまねきいれたり冬の夕焼け
モクレンの花のつぼみを眺めゐる妻は些かちひさくなりぬ
ナイル4月号

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