錆びれゆくアーケードを潜る秋風に乗せてみませう己が靴音
窓の外、乳母車には銀髪の幼児の笑み撫でてゆく風
盛衰の人の流れに従ひて喫茶ナイルに吐き出す紫煙
延々とハネーサツクルを読む午後の素足の先を河は流るる
ゴムの木の青葉に埃うつすらな夢がみえたら手紙を書くよ
たかい鼻あをい瞳の群るるなか喫茶ナイルに行灯ともる
お絞りの黄色が褪せてをりました 記憶の中の花はひまはり
硝子扉は一度行き過ぎその後にカチリと鳴つて役目を終える
遠い日の子供のやうに電球を眺めてゐますマツチありますか
燃ゆる火をたばこに移し夕闇の深まる路地へ溶けるしかなく ナイル1月号
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